包丁

 

こっそりアイツに向けた銃口

傷ついていてこのままじゃ暴発

そもそも引き金引く気もない

早く忘れたくてぶち込みたいのに

酒もインスタントも無いいつもの

僕みたいな空の冷蔵庫

握った包丁、これで何ができる
「なんか切って焼くか」
いや、それとも

切り裂いて 最低なすべてを

開いて 腐っているその脳味噌

どうなっている?

そこで咲いた臭い紅い花を

抱いて泣いてくれる人はいない

なんて過激な妄想
無力無能な脳が暴走

 

目覚めたように我に帰った

右手には調理器具

思い返している さっきの光景

戦争反対、平和が一番、平凡な僕だったはずなのに

脳の方が結局暴力に支配されてしまった

 

握った包丁、僕じゃ何も出来ない

「アイツ刺してしまおうか」

いや、やめとこう

 

切り裂いて最低なこの僕を

開いて煮えている腹わたの中

わかっている

気が付いた 気が違ったのは僕だ

消したくても決して消すことはできない

ただの無力な妄想
でもこの包丁は君も持っているはず